目次
シングルタスクの原則(たった一つの肝に銘じるべきルール)
一度に「1つの作業」のみに没頭する
もし、あなたが「ビジネスのパフォーマンスを圧倒的に上げたい」を考えているのであれば是非とも読むべきなのが、「SINGLE TASK 一点集中術/デボラ・ザック」という本です。
アメリカで出版された時間管理についての本ですが、ドイツやスペインなど世界各国で翻訳され大反響を呼びました。自己啓発の方法論において全米ナンバーワンとも評されるブライアン・トレーシ曰く、「「時間管理」と「自己管理」についてあなたが生涯に読むものの中で最も重要な一冊になるだろう」とのことです。
この本が一貫して推奨しているのは「シングルタスク/一点集中」の実践です。シングルタスクとは一度に一つの作業に集中することです。シングルタスクの実践は「時間」を有効活用し、「生産性」を上げ、「対人関係」を改善することにかけて最も効果的な方法の一つだと言えます。
シングルタスクを心がければ、次のような効果が期待できます。
- エネルギーが増し、幸福になり、安心感を覚える
- 積極的になり良質なユーモアを発揮できる
- 充実感、達成感を味わえる
- ストレス、プレッシャー、自己不信、不安、倦怠感、注意散漫を撃退できる
シンプルなので理解がしやすく、誰でも心がけ一つで実行することができます。
シングルタスクと正反対なのが「一度に複数の作業をしようとする」マルチタスクです。
一度に複数の作業をするとするといっても、仕事で複数のプロジェクトを同時に進めたり、学生が試験のために数学と英語と国語を勉強するといったことはここでいうマルチタスクにはあたりません。
ミーティングに参加しながらメールの返信をする、音楽を聴きながら勉強するなど、いわゆる「ながら作業」がマルチタスクに該当します。
仕事をしながら、人の話を聞きながら、子供と遊びながらスマホをチラ見する。着信音が鳴ればすぐにメールやラインを確認する、などは誰もが一度は経験があるのではないでしょうか。
このようなマルチタスカ―を見ると、時間を見事に有効活用しており、いかにも有能そうな印象を持ちますが、実際はそうではないようです。
なぜかというと複数のことを同時に行うと、脳の前頭前野の取り合いが起こるからです。その結果、集中力が低下し、生産性が落ちることが分かっています。
そして、落ち着きがなく、せわしなく、気まぐれでムラがあり、混乱していて自制の効かない「モンキーマインド」という精神状態になります。
30分で完了させられるタスクが2つある場合、一つずつ片付けると1時間かかります。時間に追われていたり、能力に自信がある人ほど、生産性を上げるためにマルチタスクを試みがちですが、同時進行して絶え間なく気が散っている状態が続くので、30分で終わらないばかりか仕上がりのクオリティも低下するのです。
もちろん、一つの作業を漫然とダラダラ行っていてはシングルタスクの恩恵を受けることができませんが、一つのことに100%の力を注ぎこめば、強いエネルギーと鋭い集中力が生まれ圧倒的に生産性が高まるのです。
「いつだって選択肢は2つだ。1つのことをうまくやるか、2つのことをヘタにやるかだ」という言葉の通りというわけです。
効率を下げずに「同時にできる」タスクもある
ここまでで「複数のタスクを同時にこなそうとすると、タスクを一つずつこなしていくよりも結局は時間がかかる。多数の用事を効率よく片付けるには、1度に一つのことに集中し、1個ずつ片付けていくのが正しい。」ことがお分かりいただけたかと思いますが、じつは2つのことを同時に行っても生産性が落ちないことがあります。
それは、2つのタスクが脳の別の部位を使う場合です。脳は複雑な2つのタスクを同時に処理することはできないのですが、互いに干渉し合わない全く無関係な行動であれば、同時に行っても問題なしです。
また、「簡単で機械的に行えるもの」や「集中力を必要としない活動」など意識的な努力をしなくても良い活動はメインの活動と同時並行で行えます。
具体的に言うと、テレビのバラエティー番組を見ながら簡単な食事の準備をする、音楽を聴きながら日課であるエクササイズをする、などです。ただ、「意識的な努力や集中力が必要な作業」というのは人によって違うので、自分にとって何が該当するかをよく考えなければなりません。
タクシードライバーやF1レーサーのようなプロのドライバーが車で近所のスーパーに買い物をしに行くときは、運転しながら同乗者と会話を楽しんでも問題ないかもしれません。しかし、免許を取り立ての人やペーパードライバーであれば、運転に集中するべきです。
それに、いくら「意識的な努力や集中力が不要な作業」とはいえ、複数のことを同時に行うと注意力が散漫になることは否めないので、慣れた道であってもうっかり道を間違えたり、子供が急に飛び出してきた時に瞬時に反応できないかもしれません。なので、大事なことは常に一度に「一つのことに集中する」ことなのです。
接している相手に完全に集中する
一点集中術は対人関係にも応用できます。人と話をするときは注意の全てを目の前の人に向けることです。アメリカの研究では、中高年の職業人は常にネットに接続している者に対して、敬意、注意力、聴く力、自律心の欠如を感じているといいます。
近年はtwitterやfacebookなどのソーシャルメディアや、タブレット、スマホ、ノートパソコン、電子版のメモパッドといった進化する一方のデバイスが常に手元にあります。そのどれもが少し触れただけで即座にオンになり、多くの人がそういったデバイスをいじり続けています。
たった5分であっても相手に100%集中し話を聞いてくれた方が、長時間他の作業をしながら話を聞かれるよりもよっぽど相手からの信頼を得ることができるのです。
では、同時に用件の対応を求められた場合はどうすればいいのでしょうか。部下とのミーティング中に取引先から重要なメールが入った場合などです。
このような同時用件の時は「いまここにいる」目の前の相手に集中するべきです。どうしても同時に複数の仕事の対応を迫られた場合は、事情を説明して断るか、上司に相談し判断を仰ぐかするのが正しいといえます。
断ることによって印象が悪くなる心配をする必要はありません。四六時中人からの頼み事にイエスと応じ、途中までしか終えていない作業を山ほど抱えた人よりも、できないときははっきりと「ノー」と言うほうが信頼されます。
仕事の場でだけではなく、プライベートでも同様です。家族との食事を楽しみたいなら、仕事のメッセージが届かないようにスマホの電源を切っておきましょう。
シングルタスクに集中することはプロの極意
シングルタスクに集中することはプロの極意でもあります。あちこちに注意を分散させて全く集中しない状態が続くよりかは、明確な境界線を設け、1つのことに集中している人のほうが「地に足のついた、熱意ある、創造力に溢れたプロ」と認識してもらえます。
たしかに周囲の人は自分の要望に対応して欲しいと考えているかもしれませんが、万人にいい顔するとかえって信頼感を損なうことに繋がります。常にネットに接続して、周囲からの要望に常に応えられる状態でいるとプロとしての信頼性を損なうことがあるのです。
選択する。そしてブレずに実行する
2010年に行われたハーバード大学による研究によると、仕事に熱心に取り組んでいる人ほど、幸福感が高いそうです。そして、その他様々な研究により、シングルタスクと幸福感の間には相関関係があることがわかっています。目の前の作業に没頭し、一つのことに専心することで充実感が高まり幸福感を感じることができます。
マルチタスカーは、常に時間に追われることになりがちです。常に忙しくしている人が能率よく働いているとは限らないのですが、より多くの物事をこなし、自分をすり減らし、疲労させることで、「自分が重要な人間だ」という認識を持とうとしているのです。こうした状態から早く脱却することです。
「バイタル・フューの法則」によると「重要なものはごくわずかしかない」ので、仕事に限らず質の高いアウトプットをするためにはまずはじめに物事を「些末な多数」(トリビアル・メニュー)と「ごくわずかな重要なもの」(バイタル・フュー)に振り分けることが重要になります。
シングルタスクを実践しようとすると、自分にとって今何が必要かを考えることになります。いまの状況において「自分にとって最も大切なこと」を決め責任をもってやり遂げることが意識を集中させることに繋がります。
意志決定をする際のポイントは2つ。それは、「選択する。そしてブレずに実行する」です。何かをすると決めたら、それが何であれ一心不乱に取り込む。それが自分に誠実に生きるということであり、幸福感に繋がるのです。