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グローバル社会で必要な人材と異文化理解についてがわかる本

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21世紀に入り世界は急速にグローバル化が進行しましたが、日本はその潮流にうまく対応できず「失われた30年」に突入したことはよく知られていることです。

「世の中にはいわゆる国際金融資本のような国境を越えビジネスの利益を極大化する「グローバリスト」という勢力があり、国家転覆をいとわずに世界統一市場化を目指していたが、アメリカのトランプ大統領をはじめとするナショナリストたちの挑戦を受け、その活動は終わりを迎えようとしている」という説を聞いたことがあるかもしれません。グローバリズムや超国家主義の終焉などとも言われています。

この説の真偽はともかく、たとえグローバリストの活動が鈍ったからといって、世界のグローバル化(グローバリゼーション)が止まるわけではありません。

5Gが登場したように今後も通信技術の発達によって、グローバル化は不可逆的に加速度的に進行していくでしょう。これはAmazonやFacebookのようなグローバル企業の活動に日本が賛成するか反対するかには関係ありません。

ではなぜ日本はグローバル化の波にうまく乗ることができなかったのでしょうか。

大東亜戦争で日本軍が敗北した原因を組織論的な観点から分析した「失敗の本質ー日本軍の組織論的研究」(中公文庫)というロングセラーの本がありますが、失われた30年の間に日本が犯したビジネスや外交上の失敗は大東亜戦争時の帝国陸海軍の失敗と根本が似ています。つまり、そこには日本の文化や民族的特性に基づいた失敗の原因やパターンが存在するのです。

本書ではその日本人特有の失敗パターンを明らかにするとともに、今後も進行するグローバル化のなかでどのように日本という国や日本人が生き残っていけばいいかが書かれています。ここではその内容を一部ご紹介します。

✅ 日本外交に必要な学習理論「ダブルループラーニング」とは

✅ 相手の民族的特質が理解できる「文化の世界地図」、「カルチュラル・モティベーター(動機づけ要因)」、「ディモティベーター(反発の要因)」

✅ ビジネスの場で「私は英語ができません」と言ってはいけない理由

✅ 即断即決が得意な欧米・中国のマネージャーと決断を避ける日本人マネージャー

✅ リーダーとマネージャーの違いとは

✅ 人権無視の独裁国家であるが日本よりもビジョンの構成力がはるかに高い中国

✅ 苦しくなるといつも日本を利用して切り抜ける中国

✅ 中国が仕掛ける「静かなる侵略」超限戦の特徴と米豪の対抗措置

✅ トヨタやブリジストンに見る日本企業の弱点

✅ 歴史でわかる日本人の最大の弱点

✅ 「謝罪して責任を取る」という姿勢を示すことの問題点

✅ 米軍将校が指摘した帝国陸海軍の弱点

✅ アメリカとの戦争を避けるためにすべきだったこと

✅ 表面での戦闘力ばかりを偏重する日本軍

✅ 日本が国家として生き抜くために捨てるべき思考

✅ 社会に出て長期的に役立つ人材に必要な能力

グローバルビジネスで必要な異文化理解(文化コード)

島国に住む日本人は自分たちの文化の枠の中でしか物事を考えられないし、考えようとしない傾向が強いと言われます。このことはビジネスや外交における交渉時の度重なる失敗の大きな原因になっています。「自分たちはこう考えるから、相手も同じように考えるに違いない」「自分たちの考えを相手は理解してくれるに違いない」と思い込み、そのことを前提として行動してしまうわけです。

そして日本特有の文化的特質の代表例に「謝罪から入る悪いクセ」というものがあります。何かトラブルが起きた際、「こちらが誠心誠意謝れば相手も許してくれるだろう」という考えの下、とりあえず謝って穏便に済ませようとしがちです。

しかし、日本以外の国では「謝罪する」ということは罪を認めたことになるので、刑事責任や社会的制裁を受け入れる気があると解釈されます。

従軍慰安婦の問題では謝罪しているうちにありもしない話がどんどん大きくなり、国際的な非難をあびて多額の賠償金を支払う羽目になりました。こうした問題が起こったときにまず謝罪したために、不利な立場に立たされるという失敗は、海外に進出した企業でも犯してしまう間違いです。

このような失敗を防ぐためにはまず相手の民族的特質に基づいた思考回路を学ぶことです。物事をどのように考えてどのように反応するかをあらかじめ知っておけば、正しく対応ができるのです。本書ではそのために「文化の世界地図」を提唱しています。

これはもともと、グローバル教育研究所の渥美育子理事長が提唱したもので、世界の価値体系をリーガルコード・モラルコード・レリジャスコードという3つの文化コードに分類し、その国が持つ根本的な価値観を理解しようというものです。

それぞれのコードが持つ価値観と属する主な国をまとめたものが下記の表です。

コード名 価値の中心 特徴 属する主な国
リーガルコード

法的規範
ルール
ノウハウ

・主にプロテスタント(一人ひとりが神と向き合う)の国。
・グローバル競争力が非常に強く、次々とスタンダードを作り出す
・問題解決の手法は「まず分析」。細かく分析して根本原因を突き止めてから解決方法を考える。
・コミュニケーションは直接的で、社交辞令や忖度などはない。
・交渉するときは標準化された明確なルールが重要

米国、ケベック以外のカナダ、イングラン、北欧諸国(スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど)

モラルコード

道徳的規範人間関係

・常に人間関係が中心で大家族的な発想が根本にある
・君主や経営者など上に立つ人間には徳が要求される
・ルールや問題の解決も状況次第で、それよりも人間関係を穏便に維持することを重要視する
・トラブルの際には真実を追求するよりもお互いの妥協点を探す
・本音と建前を使い分けるような間接的なコミュニケーション

日本や韓国などのアジア諸国(イスラム教国を除く)、ラテンアメリカ諸国、南ヨーロッパ諸国、中部アフリカ諸国、ロシアなど

レリジャスコード 宗教的規範
神の教え(コーラン)

・イスラム教の神の教えに従うことが絶対。神の教えが憲法。

中東諸国(イスラエル、レバノンを除く)、パキスタン、カザフスタン、バングラデシュ、マレーシア、ブルネイ、北アフリカ諸国

ミックスコード   リーガル、モラル、レリジャスコードのうち2つが併存

オーストラリア、ニュージーランド、インド、ドイツ、オランダ、イスラエル、中・南部アフリカ(モラルコード国を除く)

これらを理解したうえで、各コードとどのように向き合い、対応すべきかを考えます。もちろん対個人ということになれば相手の性格などにもよるし、同じモラルコードに分類されているからといって日本、韓国、中国のように結構違う価値観を有していたりします。

そこで、この「世界の文化地図」からさらにミクロの視点で相手を分析する概念がカルチュラル・モティベーター(動機づけ要因)ディモティベーター(反発の要因)です。これは民族によって何がモチベーションを高める要因で、逆に何がモチベーションを下げる要因なのかを理解するためのものです。

例えば、アメリカ、中国、韓国の主な要因は下記の通りです。

  モティベーター
(動機づけ要因)
ディモティベーター
(反発の要因)
アメリカ
  • 抑圧と均衡
  • プロフェッショナリズム
  • 専門知識
  • 高い教育
  • 責任と権限
  • 報酬
  • 実用性があること
  • 形式主義や階級制
  • 権威主義
  • 年功序列
  • 公私の区別が曖昧なこと
  • 実用性がないこと
中国
  • 金銭的・個人的インセンティブ
  • 権力や権限
  • 威厳
  • 世界標準の法的規範で非難されること
  • 直接的な批判やメンツを失うこと
  • 人間関係を無視したビジネス一本やりの態度
韓国
  • アバウトさ
  • 枠組みからの解放
  • 階層的権力や権威づけ
  • やればできるという信念
  • 枠組み
  • 原則
  • 契約
  • 論理
  • 周到な計画、準備
  • 報告、フィードバック

このような要因はどの国にもあるようで、同じ文化コードに属する国であっても結構違うことがわかります。ビジネスや外交の場で的外れな対応をしないためにも、こうした相手の民族的な特質を理解したうえで、コミュニケーションや交渉、マーケテイングの方法を考えなければならないということです。

グローバル人材を育成する方法

本書では日本がグローバル化社会で生き残っていくうえでカギとなるのは人材育成であるとしています。

これまでの日本の教育は試験の時にしか役に立たないことを一生懸命覚えさせて、処理する能力を高めることに主眼をおいた教育でした。学生も言われた事だけをひたすら暗記し、試験の時にそれを正確な形ではきだすことができれば評価されていました。

こういった受動的な情報処理だけに主眼を置いた教育は教育というよりは単なる「訓練」です。工業化社会に最適で画一的な労働者を大量生産することを目的としたものです。実際、この訓練は功を奏し、ある規格に適した人間、型にはまっていっさい逸脱しない人間を大量生産した結果、1980年代の規格大量生産社会の時代に日本は世界最強の工業国となりました。

しかし、この訓練は自分で考えることを奨励しない教育なので、誰も自分で考え独自の意見を持とうという発想になりません。規格大量生産の時代ではそれでもよかったのですが、その時代は過ぎ去りました。今後求められるのは大局的かつ独自の視点を持ち、時代や環境の変化に対応していける人材です。

このような人材の育成に必要となってくるのが、ダブルループラーニングクリティカルシンキングという考え方です。

常に前提を疑う思考を働かせるダブルループラーニング

ダブルループラーニングとは、「ある問題に対して既存の目的や前提を疑い、それも含めて軌道修正していくこと」です。

一方のシングルループラーニングは「ある一つの前提に基づいて、その枠のなかで最適化を行っていく」ということです。このシングルループラーニングはコツコツと一つのことを極めていく気質がある日本人が得意する作業です。

シングルループを繰り返すことでスキルを高めていく一方、常に前提となる条件が正しいかどうか検証するプロセスも働かせていく。この2つのループを働かせて学習するのがダブルループラーニングです。

そしてダブルループラーニングをする上でカギとなるのが学習棄却(アンラーニング)です。学習棄却とは「現在持っている知識や考え方、過去の成功体験をいったん捨てる」ことです。

先ほどの教育の例でいうと、規格大量生産の時代には工業化社会に最適な労働者を大量に育成することで世界の頂点を極めました。しかし、前提となる最適工業社会時代が変わり、これまでのやり方が通用しないということが分かったらそれまでの成功体験ややり方を捨てて、軌道修正しなければなりません。

戦後の日本が経済活動に専念できたのは、東西冷戦の時代でアメリカという超大国に安全保障を完全に依存することができたからでした。しかし、冷戦構造が崩壊した上に、アメリカの国力も落ち、前提となる状況が変わりました。なので、経済ばかりに専念するのではなく国防にも力を入れなければならないのです。憲法を改正して国防軍を持ちある程度の自主防衛が可能な状態にすべきですが、こちらも中途半端なままです。

日本の最大の弱点は学習棄却ができないことです。これは歴史的に見てもあきらかで、江戸時代の黒船来襲や大東亜戦争の敗戦のように、それまでの秩序が脅かされ、とことん追い詰められないと変われない。敗戦によって日本を大きく変わりましたが、これは外圧によるシングルループの強制終了です。自ら分析してどのように対応すればいいか考えて主体的に変化したわけではないので、戦前の思想や国のあり方を全否定してしまうような極端な変わり方をしてしまいました。

ダブルループラーニングは前提を疑うもう一つの回路が常に働いているから意味があるのであって、シンググループの強制終了により、もう一つのシングルループが開始されるのとは違います。これでは結局はシングルループのままです。

日本はそれくらい伝統主義の国で前例踏襲が良しとされる風潮があり、シングルループに固執してしまう傾向があります。

物事を検証して自分なりに結論を出すクリティカルシンキング

もう一つのクリティカルシンキングとは批判的思考とも言われるもので、「物事を検証的に見る」ということです。目の前にある物事や事象をそのまま鵜呑みにせず「本当に正しいのか」と疑問を持ち、自分でじっくり考察したのちに自分なりに結論を出すことです。

専門家の意見や政府が言っていることなら正しいと思い込んでしまう権威主義的な発想をやめ、自分なりの独自の思考をすることが大事です。こうした姿勢を日常化すれば、時代の変化に敏感になっていきます。背景にある諸事情を理解し、その将来を予測することも可能になっていきます。

学生が勉強する時も、教科書に書いてあることは書いてあることとして、その上で自分はどう考えるのかが重要なのです。

独創性に富み、ビジョンを描いて強力なリーダーシップを発揮できる真のリーダーを育成する上で必要が考え方です。

学歴エリートと大組織の欠点

世界最強の軍隊の軍隊を作るには「アメリカ人の将軍、ドイツ人の将校、日本人の下士官兵を集めればいい」、逆に世界最弱の軍隊を作るには「中国人の将軍、日本人の将校、イタリア人の下士官兵を集めれば良い」という有名なジョークがあります。

特に大東亜戦争時の帝国陸海軍は一般の兵士は優秀でも一部のトップクラスの司令官は無能であったという評価が一般的です。

しかし、大東亜戦争開戦時の帝国陸海軍の指導者層は頭が悪かったかといえば、そうではありません。当時の陸軍大学校や海軍大学は東大に入るよりも難しいと言われていました。知力だけではなく精神的・肉体的な強さも求められます。日本全国から優秀な学生が集まるので、大変な狭き門であったそうです。

そんな軍の教育機関ですが、海軍兵学校における兵学はすべて理数系の実学であり、理数系の学問が得意で優秀な成績を収めた人が卒業席次が高く、卒業後は軍のなかで出世していきました。

しかし、こういった理数型の提携型知識の規則に優れる学校秀才型タイプからは臨機応変に対応できる人材は生まれにくいそうです。定型知識の記憶に優れた学歴エリートはシングルループ思考しかできないので、結局は与えられた枠の中でベストパフォーマンスをたたき出すことは得意でも、不足の事態への対応能力が低い場合が多いのです。

これは成績優秀な軍人が実践で次から次へと下手を打つ結果になった理由の一つとされています。

また、軍という組織自体にも問題がありました。開戦当時、軍隊は平時に過剰適応した生活共同体になってしまっていました。モラルコードの文化らしく、戦争という極限状態でも問題の解決や責任の追及よりも人間関係の維持や組織内融和を優先するという、大家族的な仲良し組織になってしまっていたということです。

平時では安定した生活共同体的な組織でも問題はなかもしれませんが、戦争を遂行するには不確実性に向き合う組織ではければいけません。米軍は大東亜戦争にあたり、能力本位でアイゼンハワーやニミッツをトップに起用しました。

日本も日露戦争の3か月前には常備艦隊司令長官を日高壮之丞中将から東郷平八郎中将に代えるといったような、平時から戦時への切り替えを行いましたが、こういった能力による抜擢人事は大東亜戦争時には行われず、一度将官になると序列は全く変わらないという硬直化した長老組織になっていたのです。

現在の一部の日本企業もこれと似たような状況は残っているのではないでしょうか。特に与えられた枠内で期待に沿うことが得意な高学歴社員が多かったり、年功序列で能力本位の抜擢人事が行われない風潮がある大企業は要注意です。こうした構造的欠陥を見直さない限り、イノベーションが行われずグローバルな変化に対応できない組織になってしまう可能性が高いのです。

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